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みどりの本棚

読んだ本の感想を垂れ流します。ネタバレもあるので予めご注意を。普段はSEやってます。

チョコレートゲーム/岡嶋二人

!注意!盛大にネタバレしてます。むしろネタバレから始まります。

人がいることで成立するアリバイトリックを使っておきながら、人がいることで慌てて逃げた、という犯行の矛盾に途中で気づいてしまったんですが、気づいてからが考えさせられる。むしろわざと気づかせているんじゃないのかという説を唱えたい。
何故かって、これが中学生の事件だから。

中学生だから、何するかわかんないよね、という大人から見た不気味さ、理解できない生き物への言い訳。と同時に、なんでもまだ中学生だから、中学生だからと言われたらたまったもんじゃないよねという大人への失望。

以前、本の楽しさを教えてくれた人に、推理小説はプレゼンのお手本だと教わった。当時は意味がわからなくて、(今は意味がわかっているという訳ではない)ただ確かに、推理小説で一度別の所が気になってしまうと、もうそこから本編そっちのけでそちらが気になってしまう感覚はわかった。今回も、最初に挙げた箇所が途中から気になって気になって。気づかない警察はどんだけアホなんだよと憤っていました。
でもそこでふと思ったのは、これが中学生だから気づかないことが成り立つんだということ。

考えてみればこのお話は、中学生の間でしか成り立たないように作られている。
動機となった競馬と、まさか中学生が結びつかないとかだけでなくて、前述のような警察の動き(見くびり)も含めて。
最初に書いたシーンは、割と分かりやすかったんじゃないかなと思う。真犯人の行動もなんとなく違和感があるし。だからわざと気づかせて、中学生という存在を際立たせたんではないかと。

中学生って微妙なとか難しいお年頃とかよく言いますけど、単純に、理解できないことを微妙なとか難しいとかで逃げてるだけだと思うんですよね。でも、当の中学生本人もわかってないんです。だから、わからないまま大人になった大人は、あー俺もあんな頃があったなぁ。。。って決めつけて、難しい認定をする。
そうじゃない。そうじゃないんだーって悔しい。
このお話も、大人から見たら不気味な事件だし、動機なんて録に調べずとっとと片付けたいという流れをありありと感じて、それがとても見ていて悔しい。

私たちは、理解できないと諦めた存在に対して、あまりに上っ面しか見ていないんではないか。
私もこいつとは生涯わかり合えないなと思う人がいます。ヒヤリとしますね。

おかしな二人 岡嶋二人盛衰記/井上夢人

徳さん、書きたい?
あぁ、やってみたいね。
じゃあ、公平にこれで決めよう、とマッチ棒を取り上げる。

この最後のシーンがすごく好きです。
このやりとりがまさに岡嶋二人そのものだと思った。
良い意味でのカッコつけがすごく好き。

焦茶色のパステルのときも、審査員に明日天気にしておくれが競馬という珍しい題材を使ったからだと言われたことにカチンときて、次も競馬で書いてやるよ!と言って決まった。 このシーンも、最後の小説をどちらが書くか、というものすごく大切なことを話し合いもなく、賭けで決めてしまう。居合わせた編集者達は呆れている。そんな俺たちすごいだろドヤァ。
悪い意味ではありません。

それでいてまったく嫌な感じにならないのがすごい。そんな子ども染みたカッコつけが、岡嶋二人だ。悪ふざけから始まった二人だからこそ。
この本の前半に漂うバブル時代のような(その時代は知らないけど)無敵感を与えてくれる。
その心は?そういう会話をしてくれる誰かが恋しくなる。
思えば小学生の頃は時間なんて気にせず、存在もしない宇宙人の生活を重大事として友達とずっと妄想していた。そのネタで1日中笑っていられた。
大人になってからは、そんな時間は無いに等しくなってしまったけど、そんな時間を恋しくさせる。
もう一度、子どもの頃の無敵感を取り戻せる、そんな本であり、そんな二人だと思う。